5 分 2022年8月2日
変革の力が新たなアライアンスを実現し得る方法とは

変革の力が新たなアライアンスを実現し得る方法とは

執筆者 Andy Baldwin

EY Global Managing Partner – Client Service

アンディ・ボルドウィン / イノベーション、FinTech(フィンテック)、インクルーシブな成長と地政学的状況に興味を持つ。金融サービス、経済、投資トレンドの各分野では有数のメディアコメンテーター。熱心なサイクリスト。

EY Japanの窓口

EY Japan マネージング・パートナー/マーケッツ 兼 EY Japan チーフ・サステナビリティ・オフィサー

Japanリージョンのマーケッツリーダーおよび主要なアカウントリーダー。35年以上にわたりEYに貢献。公認会計士。

5 分 2022年8月2日
関連トピック 世界経済フォーラム

関連資料を表示

  • EYによる産業の未来図を再構築するための調査2022(EY Reimagining Industry Futures study)

世界が歴史的な転換点を迎えている中、直⾯する課題に対処するには、協働することが求められます。

要点
  • 気候変動問題への取り組みにおいて、世界経済に変革を起こすアライアンスが求められている。
  • 協働することで、組織はイノベーションを起こす能力を高めるとともに、社会的不平等の問題に対処することができる。
  • デジタルトランスフォーメーションを加速させるにあたり、組織はエコシステムパートナーのスキルと知識を活用する必要がある。
Local Perspective IconEY Japanの視点

新型コロナウイルス(COVID-19)の発生から2年半がたちました。その間、デジタルテクノロジーの活用が急速に進み、多くの日本企業もリモートワークの導入やそれに伴う内部プロセスのデジタル化など、極めて短期間で変革の必要に迫られ、対応を進めてきました。また、社会の仕組みも変化しており、オンライン店舗の拡充など、市民や消費者による政府や企業への期待や要求もこれまで以上に高まっています。パンデミック以前からの課題、かつ史上最大の危機とも言われる気候変動においては、炭素排出量削減の文脈で上述の変化がプラスに働く側面もある一方、足元では地政学的環境に起因するサプライチェーンの分断といった懸念材料もあり、単一の企業や組織でこうした状況への解決策を見いだすことはもはや不可能でしょう。

私たちEYも、各種アライアンスを生かしながら、クライアント企業のDX推進や脱炭素化などの支援を通じ、エコシステム全体として広く社会課題の解決を導くことを目指しています。

 

EY Japanの窓口

瀧澤 徳也
EY Japan マネージング・パートナー/マーケッツ 兼 EY Japan チーフ・サステナビリティ・オフィサー

世界は今、歴史的な転換点に⽴っています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の反動は現在も続いており、その影響を乗り切るための取り組みが継続されています。その⼀⽅で、⼤きな変⾰の⼒が押し寄せています。その⼒は強⼤で、関連するリスクも含めて組織や国が単独で制御しきれる⾒込みは薄いと⾔えるでしょう。

地球存亡に関わる気候変動の脅威、社会的不平等の軽減を迫る市⺠の声やデジタルトランスフォーメーションの加速はこの⼒のほんの⼀部にすぎません。ここから⽬を背けることなく前に進むためには、一致団結して広範なエコシステムから得られる知識を活⽤しながら、戦略の構築と対応を図ることです。問題を解決し⽣き残るために、私たちは連携しなければなりません。

組織はエコシステムの持つ多大なビジネス価値をすでに認識しています。世界1,000社以上の企業を対象としたEYによる産業の未来図を再構築するための調査2022(EY Reimagining Industry Futures Study 2022)(pdf)では、4分の3(75%)の企業が、エコシステムの戦略が今後5年間の成長の重要な推進力になると回答しています。また3分の2以上(69%)が、ビジネスエコシステムの一環として、他の組織とすでに協働を進めています。

経済、環境、社会に広がる混乱に対し直ちに⽴ち向かう上で、エコシステムは極めて重要です。事業の機動性への脅威を軽減するため、新たなアライアンスを形成するとともに、従来のエコシステムパートナーをさらに活⽤し強化して、リスク戦略を描き直す必要があります。その方法を以下にご紹介します。

1. 気候変動に対する共闘

世界経済フォーラムのグローバルリスク報告書2022年版(pdf、英語版のみ)では、気候変動への対処を怠ることが今後10年で世界が直⾯する最大のリスクとなり、異常気象や⽣物多様性の損失につながると指摘されています。しかし、政府や企業の意欲的な誓約にもかかわらず、ネットゼロ社会への移⾏は速やかに進んでいるとは⾔えません。このままでは、世界は2100年までに産業革命前の水準を約2.4°C上回る温暖化に見舞われ、壊滅的な結果がもたらされる可能性があります。

気候変動との闘いに勝ち、リスクを軽減するならば、こうした状況に揺るぎなく迅速に対処しなければなりません。気候問題を中核として世界経済に変⾰を起こすには、企業、業界、投資家、政府によるアライアンスの形成が鍵を握ります。

例えば投資家にとっては、再⽣可能エネルギーへの移⾏に⼤きな投資機会があります。財源の確保がネットゼロ⽬標達成への最⼤の障壁でしょうかの分析によれば、2050年までに、現在資金拠出が約束されている7兆7,000億米ドルに加え、5兆2,000億米ドルの資金が必要です。大企業にとっても、環境技術分野の革新的なスタートアップ企業と提携して、新たな製品やサービスを開発し市場に売り出す絶好の機会となります。特に、最新のEY Long-Term Value and Corporate Governance Surveyで回答した取締役や幹部の3分の1以上(34%)が、新たに持続可能な製品やサービスを開発することは、環境・社会・ガバナンス(ESG)の要素を企業戦略に取り入れる上でかなり有利に働くと考えています。

環境分野における協働の良い見本として、グリーン水素カタパルトプロジェクトがあります。同プロジェクトはグリーン水素生産の拡大を目指した国際的なイニシアチブであり、2026年までにグリーン水素生産量を50倍に増やすことを目標にしています。

2. 社会的不平等の軽減を求める圧力への対応

今回のパンデミックによって、社会的不平等は悪化しました。それと同時に、企業が果たすべき重要な社会的役割にも注目が集まりました。ヘルスケアやライフサイエンス、輸送、物流、⼩売、電気・ガスをはじめとする幅広い業種の企業が、国や地域社会がパンデミックの影響に耐え、持ちこたえるための⽀えとなったためです。

その結果、企業は社会問題にさらに取り組むことができる、また取り組むべきである、という考えが世間に広がっています。2022エデルマン・トラストバロメーター(pdf、英語版のみ)によると、回答者のほぼ半数(49%)が、企業は経済的不平等に十分に対処していないと考えています。また、従業員の60%が、⾃分たちが関⼼を寄せている問題の論争において、⾃社のCEOからの発⾔を期待しています。従って、不平等などの社会的問題に積極的に取り組んでいない企業は、市場およびレピュテーションの両⽅で重⼤なリスクにさらされることになります。

エコシステムには変⾰をもたらす⼒があり、また、その⼒は、さまざまな組織の提携によって社会に変化をもたらす場でこそ、⽰すことができると、私たちEYは考えています。例えばEYは、テクノロジー分野でのジェンダー格差を取り除くことを目的とした官⺠の取り組みであるグローバルEQUALSパートナーシップに参加しています。また、女子のコンピューティングスキルを育成する非営利団体であるGirls Who Codeと提携しています。

DE&I(ダイバーシティ、エクイティ、インクルーシブネス)を優先することで、組織は社会的不平等に積極的に取り組むことができます。同時に、コラボレーションし、多様な人材のスキルを最⼤限に活⽤することで、イノベーションの⼒を⾼めることが可能です。

3. デジタルトランスフォーメーションを加速させるための提携

新型コロナウイルス感染症が発生する以前から、デジタルトランスフォーメーション(DX)は急速に進んでいました。DXはパンデミックによってさらに加速し、ハイブリッド型の働き⽅が脚光を浴びる新時代が到来したことで、企業、さらには業界全体が急速なデジタル化を余儀なくされました。

デジタル戦略とデジタルインフラをビジネスのあらゆる面に取り入れている組織は、危機に際して高いレジリエンス(弾力性)と機動性を発揮するだけでなく、財務面での業績にも優れています。また、パンデミックにより多くの従業員の働く場所が分散した状態になっていることから、オンラインのコラボレーションツールやコミュニケーションツールのほか、クラウドベースのサービスの有用性にも注目が集まりました。購買行動にも幅広い変化が起こっており、EY Future Consumer Indexによると、消費者の36%が、今後はオンラインでの購入が増えると回答しています。

迅速なデジタル化が求められる中、組織はエコシステムを活⽤して、テクノロジーの速やかな導⼊と⼤規模なイノベーションのために必要なスキルを⼿に⼊れる必要があります。エコシステムの⼒と、エコシステムから得られる多様な経験や視点を活⽤することで、状況に即した問題解決、テクノロジーの柔軟な適⽤、創造的な破壊を生むビジネスモデルが実現します。また、リスクとリターンを共有する能⼒が得られるとともに、顧客の期待に応えサイバーセキュリティの脅威に対抗する上で効果的な⼿段を新たに⼿に⼊れることができます。

私たちEYは、アライアンスとエコシステムこそ、ビジネスの変⾰、およびクライアントへのサービス提供にとって重要だと考えています。例を挙げると、Microsoftとのアライアンスにより、クライアントのデジタルジャーニーを加速させる上で有用な革新的なクラウドソリューションを開発しています。Dell Technologiesとのアライアンスでは、ビジネス戦略、業界知識、そしてDellが持つ業界屈指のテクノロジーポートフォリオを結集し、クライアントが未来のデジタルエンタープライズへと変革を果たすためのサポートを提供しています。

ディスラプションの時代

今、変化は急速に進んでいます。レジリエンスは⽣き残る上で決定的に重要なスキルであり、変⾰はビジネスを成功させる⼒となります。世界の再構築を進⾏させている変⾰の⼒を駆使するには、協働し、パートナーに⼿を差し伸べるとともに、今後新たな機会を共同で創出し成⻑を加速させることのできるスキル、テクノロジー、リソースに投資することが最良の選択と言えるでしょう。

 

サマリー

私たちが直⾯する課題を解決するためには、協働することが求められます。成功への道を切り開くには、一致団結して気候変動に⽴ち向かい、DE&Iを優先し、デジタルトランスフォーメーションを組織のあらゆる⾯に取り⼊れる必要があります。

この歴史的転換点にある今こそ、協働を最⼤限に推し進める時です。

この記事について

執筆者 Andy Baldwin

EY Global Managing Partner – Client Service

アンディ・ボルドウィン / イノベーション、FinTech(フィンテック)、インクルーシブな成長と地政学的状況に興味を持つ。金融サービス、経済、投資トレンドの各分野では有数のメディアコメンテーター。熱心なサイクリスト。

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Japanリージョンのマーケッツリーダーおよび主要なアカウントリーダー。35年以上にわたりEYに貢献。公認会計士。

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