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オープンイノベーション促進税制の創設

2020年6月30日 PDF
カテゴリー Tax update

情報センサー2020年7月号 Tax update

EY税理士法人 税理士 宮嵜 晃

2007年EY税理士法人に入所。14年7月から17年3月まで経済産業省 貿易経済協力局 貿易振興課(国際租税担当)に出向。帰任後は主に国際課税、研究開発税制に関するアドバイザリー業務に従事。日本機械輸出組合 国際税務研究会委員。

Ⅰ はじめに

イノベーションの担い手となるスタートアップ企業への新たな資金の供給を促進し成長につなげていくため、25%の所得控除を講ずる措置が設けられました。

Ⅱ オープンイノベーション促進税制の概要

本税制により所得控除を受けるためには、<図1>の①から④に記載する要件を満たす必要があります。またこれに加えて、一定の要件を満たすスタートアップ企業の株式の取得価額の25%以下の金額を、特別勘定(利益剰余金の中に任意積立金を積み立てることとされています)の金額として経理する必要があります。

図1「オープンイノベーション促進税制」の概要

なお株式の取得から5年以内に、株式譲渡を行った場合や配当を受けた場合などは、特別勘定を取崩し、所得控除分を取戻すことになります。

1. 国内対象法人の要件

本税制の対象法人は株式会社、相互会社、中小企業等協同組合、農林中央金庫、信用金庫及び信用金庫連合会となります。
また、この対象法人が、国内に所在する次のCVCを経由して出資を行う場合も対象になります。一方で、海外に所在するCVCを経由した出資は対象になりませんのでご留意ください。

この対象法人の持分比率が過半数の組合であって、以下のいずれかに該当するCVC(<図2>参照)

①その法人の国内完全子会社が無限責任組合員(GP)である投資事業有限責任組合(LPS)

②その法人が単独の有限責任組合員(LP)である投資事業有限責任組合

③民法上の組合

図2 国内対象法人の要件

2. 出資を受ける主体の要件

<図3>①から③を全て満たす国内企業や、それに類する外国企業に対する出資が対象になります。③については「あらゆる法人の有する株式数割合が合計2/3未満」とあるため、創業者含む個人やCVCにより1/3以上保有される必要があります。

図3 出資を受ける主体の要件

3. 出資行為の要件

出資行為の要件については<図1>③に記載のとおりですが、スタートアップ企業に新たに資金を供給することにより、スタートアップ企業の株式を50%超取得するM&Aも対象になります(発行済株式の取得分は対象外)。一方で、すでに対象法人が50%超の株式を保有しているスタートアップ企業への追加投資は、出資を受ける主体の要件(<図3>②)により、本税制の対象外となります(<図4>参照)。

図4 株式取得のパターン

また<図1>③の出資行為の要件については、経済産業省が次の3点を満たすことを確認し、証明書を交付することとされています。

①高い生産性が見込まれる事業または新たな事業の開拓を目指した事業活動であること

②①において活用するスタートアップ企業の経営資源が革新的なものであること

③①の実施に当たり、対象法人からスタートアップ企業にも必要な協力を行い、その協力がスタートアップ企業の成長に貢献するものであること

4. 申請手続き

本税制の適用を受けるためには、前記Ⅱ3.に記載した経済産業大臣の証明書が必要になります。企業は事業年度内に行った全ての対象案件について、まとめて申請書を経済産業省に提出します。企業からの申請書の提出後、証明書の交付までに必要な期間は最大60日とされています。申請様式などの詳細は経済産業省のウェブサイトをご覧ください。

Ⅲ おわりに

事業会社による一定のベンチャー企業への出資に対し、出資の一定額の所得控除を認めるという画期的な制度が導入されました。適用を受けるための手続きについても事後確認とされており、従来の税制と比べても大幅に緩和されました。
事業革新につながるオープンイノベーションを促進する観点から本税制の有効活用が期待されます。

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