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固定資産の減損会計の実務ポイント解説シリーズ第7回 税務上の論点と税効果会計に関する実務論点

2017年11月30日 PDF
カテゴリー 会計情報レポート

情報センサー2017年12月号 会計情報レポート

会計監理部 公認会計士 村田貴広

品質管理本部 会計監理部において、会計処理および開示に関して相談を受ける業務、ならびに研修・セミナー講師を含む会計に関する当法人内外への情報提供などの業務に従事。主な著書(共著)に『減損会計の実務詳解Q&A』『ここが変わった!税効果会計―繰延税金資産の回収可能性へのインパクト』(いずれも中央経済社)などがある。

Ⅰ  はじめに

第7回の本稿では固定資産の減損会計における税務上の論点と税効果会計に関する実務論点を取り上げます。なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることをあらかじめお断りします。

Ⅱ   税務上の論点と税効果会計に関する実務論点

1. 減損会計と税務及び税効果会計との関係

(1) 固定資産の減損損失の税務上の取扱い

固定資産の減損損失は、資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった場合に、回収可能性を反映させるように帳簿価額を減額する会計処理です(固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書 三 3.)。その回収可能価額は、正味売却価額と使用価値のうちいずれか高い金額となりますが、税務上の時価とは異なるケースがほとんどであるものと想定されます。税務上は、固定資産の評価損の計上は極めて限定的な状況においてしか認められていないため、会計上で減損損失を計上した場合には、法人税計算上、加算調整されることが多いと考えられます。

(2) 固定資産の減損損失の税効果会計上の取扱い

会計上で減損損失を計上し、法人税計算上、加算調整した場合、減損損失を計上した固定資産の会計上の簿価と税務上の簿価に差異が生じるので、税効果会計上当該差異は将来減算一時差異となり、回収可能性があると認められたものにつき繰延税金資産が計上されることになります。

2. 固定資産の減損損失に係る将来減算一時差異の回収可能性の判断

固定資産の減損損失に係る将来減算一時差異については、減損損失が建物や機械装置等の償却資産に関するものと、土地等の非償却資産に関するものとでは、その性格が異なることから、回収可能性の判断に関する取扱いが異なります。

(1) 償却資産

償却資産の減損損失に係る将来減算一時差異は、次年度以降における減価償却計算を通して解消されることから、スケジューリング可能な将来減算一時差異として取り扱われます。当該将来減算一時差異に係る繰延税金資産の回収可能性については、繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(以下、回収可能性適用指針)において、建物の減価償却超過額に係る将来減算一時差異と同様な取扱いは適用しないとされています(回収可能性適用指針36項(1))。
建物の減価償却超過額に係る将来減算一時差異は、解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異として取り扱い、廃止前の「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」(以下、繰延税金資産取扱)と同様に、(分類3)に該当する企業では、将来の合理的な見積期間(おおむね5年)を超えた期間においても、期末における当該将来減算一時差異の最終解消年度までに解消されると見込まれる将来減算一時差異に係る繰延税金資産は、回収可能性があると判断できるものとされています(回収可能性適用指針35項(2)、(3)、94項から96項)。
一方、償却資産の減損損失については、廃止前の「その他有価証券の評価差額及び固定資産の減損損失に係る税効果会計の適用における監査上の取扱い」において、その本質が減価償却とは異なる性質のものであり、臨時性が極めて高く、かつ、金額も巨額になる可能性が高いことから、建物の減価償却超過額と同様の取扱いはしないものと整理されており、当該取扱いは実務に定着しているところです。また、減損損失は業績の悪化に伴い生じたものであり、将来の収益力に影響を及ぼす要因があることなども勘案し、解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異の取扱いは適用しないものとされています(回収可能性適用指針104項)。
(分類3)に該当する企業における建物の減価償却超過額と償却資産の減損損失に係る将来減算一時差異の取扱いを比較すると、<表1>のようになります。

表1 (分類3)に該当する企業における建物の減価償却超過額に係る将来減算一時差異と償却資産の減損損失の取扱い

(2) 非償却資産

土地等の非償却資産の減損損失に係る将来減算一時差異は、売却等に係る意思決定または実施計画等がない場合、スケジューリング不能な一時差異として取り扱うものとされています(回収可能性適用指針36項(2))。

設例

A社は製品Xを製造しているY工場について、収益性が低下したため、建物1,200百万円(残存償却年数6年)、土地2,000百万円の減損損失を計上した。
Y工場の閉鎖や売却の予定はない。また、A社の回収可能性適用指針における分類は(分類3)の企業であり、5年間の一時差異等加減算前課税所得の見積額に基づいて、5年間の一時差異スケジューリングの結果、回収可能性があるものにつき繰延税金資産を計上している。なお、法定実効税率は30%とする。

このケースにおいて、Y工場の閉鎖や売却の予定はないことから、非償却資産である土地の減損損失に係る将来減算一時差異についてはスケジューリング不能な一時差異となります。一方、建物の減損損失に係る将来減算一時差異については、減価償却を通じて、残存償却年数の6年間で200百万円ずつ解消されていきます。(分類3)の企業であり、将来の合理的な見積可能期間(おおむね5年)内の一時差異等加減算前課税所得の見積額に基づいて、当該見積可能期間の一時差異等のスケジューリングの結果、例えば1,000百万円(=200百万円×5年)の将来減算一時差異が解消見込であるとする場合には、回収可能とされる繰延税金資産は300百万円(=1,000百万円×30%)となります。

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