国内SSCの効果と成功の要諦
情報センサー2017年3月号 EY Advisory
EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング(株)
IAドメイン 服部伸一郎
外資系のBPOベンダーやコンサルティング会社で、SSC設立やデリバリー、業務改革、要員再整理や人事制度設計など多数のプロジェクトに参画。当法人では、SSC、BPOの戦略立案、設計、立ち上げから、デリバリー以降の各種管理(契約管理、プロセス管理など)までを支援する、SRA(Sourcing Risk Advisory)サービス提供に従事。
Ⅰ はじめに
最近は景気回復の兆しの下、日本企業では、体力があるうちに改革を推進しようとする機運が高まっています。経理、人事、購買などのバックオフィス業務を一カ所もしくは複数拠点に集約化するシェアード・サービス・センター(SSC)設立の動きが活発化しています。
Ⅱ 日本におけるSSCの動き
SSCについては、2000年初頭に自前によるSSC設立が活発化しましたが、次の理由で成功した事例は少なかったのが実情です。
- 子会社・グループ会社の業務を把握できず、集約できた業務が少なかった。
- 集約後の業務に対する品質管理のノウハウがなく、業務の品質を一定に保てなかった。
- 結果的に、SSCが本社社員からの出向者で構成されており、人件費の低減が図られなかった。
- 標準化や業務改善のノウハウがなく、移管前と同じやり方で業務を遂行していた。
最近の企業では、コスト削減だけではなく、それ以外の効果を得る目的のためにSSCを設立しています。
Ⅲ SSCの効果
SSC設立によって創出される効果は、一般的には下記が挙げられます(<表1>参照)。
前述のとおり、SSC設立はコスト(人件費)削減だけではないとはいえ、企業のマネジメントにとって、こちらも重要な要素であることは否めません。当法人のこれまでのSSC設立支援の経験から、<表1>のコスト(人件費)削減の効果のうちSSC運用による効果は、<表2>の通りです。
SSCによるコスト削減と言っても効果の創出時期はさまざまであること、SSCを設立するだけではなく、業務運営のために各種の方法論の導入によって初めて得られる効果であることに留意する必要があります。
Ⅳ SSC成功における要諦
前述のとおり、SSC設立によってもたらされる効果について解説してきましたが、これまでの支援経験から、これらの効果を創出させるためのSSC、すなわち「SSCの成功の要諦」について、逆説的に失敗事例から導き出される示唆について「SSC設立のアプローチ面」からまとめると<図1>のようになります。
【アプローチ面の総括】
- システム開発と同様、上流フェーズでの失敗は後工程で取り戻せないことから、フェーズごとにマイルストーンやトールゲートを設けた綿密な工程管理と意思決定プロセスが重要である。
- フェーズ4においては、ガバナンス上でSSC設立の責任者/責任部署による、明確なトップダウン方式による意思決定とコミュニケーションが必須である。