旬刊経理情報 連載『女性リーダーからあなたへ』ー 第80回 「前倒しのキャリア」で自分らしい生き方を実践

山田 奈央子
株式会社シルキースタイル 代表取締役

Entrepreneurial Winning Womenの企画・協力で、旬刊経理情報に『女性リーダーからあなたへ』を連載しています。2023年12月10日号に掲載された記事をご紹介します。

女性には女性ならではのライフステージがあります。想い描いたライフプランがあっても妊娠、出産はそのとおりにいくとは限りません。また、キャリアを積んで管理職になりたいと思っても、更年期症状で諦めるかもしれません。だからこそ女性は「前倒しのキャリア」が必要で、早いタイミングで選択肢の幅を持ったほうがいい、というのが私の考えです。

それを実感したのが、34歳の時でした。子宮頸がん検査にひっかかり妊娠できないかもしれないといわれたのです。その時、健康でなければキャリアも生き方も思いどおりにいかない、と落ち込みました。そこから自分の体に向きあい、仕事では結果と実績を早めに出そうと決めました。

さて、私が新卒で入社した会社は下着メーカーでした。1年目から下着の開発に携われた私は、大好きなものづくりをしながら、下着の楽しさを知ってほしく情報発信もしていました。ブランドづくりにも興味を持ち、上司に何度もプレゼンをし小さいブランドを立ち上げさせてもらいました。材料調達、工場とのやりとりを1人で行い、発売タイミングではメディア向けのお披露目会までやりました。すべて初めてのことでしたが、どれも楽しく、自分の経験にすることができました。

自信がついたタイミングで「女性が自分らしく生きられる商品が作りたい」と思い、26歳で起業しました。起業した会社では、下着を身に着けた時に体が綺麗に見えるボディケア商品作りからスタートしました。「こんなのあったらいいな」という独自視点で商品開発をし、テレビショッピング等で戦略的に売ることを柱としてきました。

34歳の時に治療をはじめたものの妊娠がわかったタイミングでは、メーカーさんと共に新しい下着ブランドを立ち上げ、出産する前に大ヒットを出すことができました。これもキャリアの前倒しです。

ところが、下の子が小学校にあがり謀殺されていたなか、自分の身体に違和感があるのにもかかわらず、見て見ぬふりをしていたのです。女性疾患に見舞われて緊急手術をしたのですが手術後も思うように仕事ができず、辛い思いをしました。世の中の流れはとても早いからこそ「思い立ったが吉日」で誰よりも早く動き、キャリアを積む経験を1つでも多くすることが成功への近道につながるのではないでしょうか。

その1つが、2021年に立ち上げた「(一社)日本フェムテック協会」です。この協会を立ち上げて、私のキャリアは女性のキャリア支援や企業の健康経営支援にまでひろがって行ったのです。新たなキャリアの幅を広げた私にまさかのお声かけがありました。上場企業からの社外役員就任のお声かけでした。もちろん私のキャリアが広がったのはいうまでもありません。更年期に本格的に突入しようとする前のタイミングでキャリアの前倒しができ、人生の選択肢も広がりました。

女性にとっては大きく変化が起こる「出産と更年期」の前にキャリアを前倒し、更年期前にはマネージメント経験もしているとキャリア形成によい影響が出てくるかと思います。まずは、ライフプランとそれに合わせたキャリアプランを描いてみると、どのタイミングまでに何を前倒ししておくとよいかがみえてきます。仕事も体もライフもマネージメントできる女性は幸せに働き続けられるのではないでしょうか。そのためにも早い段階で心から好きだと思えるものをみつけ、それを強みにしていってください。

山田 奈央子

山田 奈央子(やまだ・なおこ)
株式会社シルキースタイル 代表取締役
一般社団法人日本フェムテック協会 代表理事
ヤマトインターナショナル株式会社 社外監査役

略歴

大手下着メーカーで企画・開発を行った後、世界初の下着コンシェルジュとして独立。女性の体と下着の専門家として研究と発信を行う。株式会社シルキースタイルを設立し、女性特有のお悩みに寄り添ったインナー、健康雑貨などの商品企画開発を17年間行う。自身の女性疾患もきかっけとなり、2021年に、医師とともに一般社団法人日本フェムテック協会を設立。代表理事として女性特有のゆらぎに寄り添うためのウィメンズヘルスリテラシーの重要さを雑誌・TV・企業・行政などで周知する活動をしている。2男の母。