組替調整額 (リサイクリング)の考え方

2017年7月19日
カテゴリー 会計実務Q&A

Question 

組替調整額 (リサイクリング)とはどのようなものでしょうか。

Answer 

「組替調整額」は、当期純利益を構成する項目のうち、当期又は過去の期間にその他の包括利益に含まれていた部分を言います(「包括利益の表示に関する会計基準」第9項)。

すなわち組替調整額 (リサイクリング)とは、一度「その他の包括利益」として認識したものについて、当期純利益の計算にあらためて含めた額(『リサイクル』をした額)といえます。

組替調整額(リサイクリング)となるその他の包括利益としては、次のものが挙げられます。

その他の包括利益の内訳項目 組替調整額と考えられる金額
その他有価証券評価差額金 当期に計上された売却損益及び減損処理された金額等
繰延ヘッジ損益 ヘッジ対象に係る損益が認識されたことなどに伴って当期純利益に含められた金額
為替換算調整勘定 子会社に対する持分の減少に伴って取り崩されて当期純利益に含められた金額
退職給付に係る調整額 前期末の未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用のうち、当期に償却され当期純利益を構成する項目として損益処理された金額

以下、その他有価証券評価差額金を例に挙げ、簡単な数値例で説明します(説明の便宜上、税効果は無視します)。

前提
前期の期中に株式1株を50で取得。前期末の時価は60。当期の期中に90で売却(売却直前の時価は90)

前期末
取得価額 50、時価 60、評価差額 10(10を「その他の包括利益」として認識)

当期の売却直前時点
取得価額 50、時価 90、評価差額 40(新たに30(=40-10)を「その他の包括利益」として認識)

当期の売却時点
取得価額 0、時価 0、売却損益 40(投資有価証券売却益として「当期純利益」の計算に含まれる額)

当期の売却時点

上記の「売却益 40」が、「その他の包括利益」からリサイクルした額、すなわち、組替調整額 に該当することとなります。

なお、前期の時価変動10だけではなく、当期の時価変動30(=40-10)も、組替調整額 に含まれることに留意が必要です。

根拠条文

  • 包括利益の表示に関する会計基準 第9項

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