公認会計士 太田 達也
株主総会に向けての準備
サステナビリティに対する企業の取組みが企業価値の評価に重要な影響を与えるとの認識が定着しつつあり、また、令和5年3月期以降の有価証券報告書から、サステナビリティに関する情報開示の拡充が行われています。
サステナビリティに関する経営方針や取組みに株主の関心が高まっており、株主総会において株主から質問が提起される可能性もあります。一定の経営方針を策定している企業が多く、当該経営方針や取組みをわかりやすく説明できるように、準備しておく必要があると考えられます。
株主総会の想定問答例
株主総会におけるサステナビリティに関する想定問答例を2つ挙げます。1つはサステナビリティに対する経営方針・取組みに係る想定問答、もう1つは気候変動問題に対する取組みに係る質問と想定問答です。
Q
サステナビリティに関する投資家や株主の関心が高まっています。開示の充実化も行われています。当社のサステナビリティに対する経営方針や取組みを教えてください。
A
当社では、サステナビリティを巡る課題を重要なものであると認識しており、サステナビリティに関する方針を策定しております。また、サステナビリティ委員会を設け、対象となる項目のリスクと機会の評価を行った上で、取締役会において戦略の策定を行う仕組みを採用しています。
当社グループのサステナビリティに関する基本的な考え方は、「事業活動を通じて社会価値を創出し、社会の発展に貢献していくこと」です。その実現のために、サステナビリティに関する重要課題を特定し、中長期戦略の中にそれらを組み込んで具体的な取組みおよび目標を設定し、事業を通じて実行していくことが必要であると認識しています。当社グループにとってのサステナビリティとは、社会と企業の双方の持続可能性を追求することであり、サステナビリティ重要課題と長期ビジョン・中長期経営計画との統合を図り、これからも社会の持続的な発展と当社グループの持続的な成長を目指して経営を行っていきます。
当社グループでは、サステナビリティに関する重要課題として、次の5つを重要課題に挙げ、取り組んでいく方針です。
- ガバナンス強化によるグループ経営基盤の強化(当社グループ全体のガバナンス強化による強固な経営基盤の確立を通じて、社会・環境価値を創出すること)
- ステークホルダーとの協働(事業活動を通じて、顧客、ビジネスパートナー、従業員、社会といったステークホルダーからの信頼・支持を得て、ともに持続可能な未来の実現を目指すこと)
- 環境問題への取組み(再生可能エネルギーへの転換により、サステナビリティの運用化を図り、エネルギーを節約すること。事業活動において生じる環境負荷の低減や生物多様性等に配慮するとともに、脱炭素社会への移行を促すことで、カーボンニュートラル社会の実現に貢献すること)
- 当社グループで働く多様な人財の能力やスキルを引き出す人財ファースト企業への変革
- 個人の尊重(あらゆる企業活動において、個人の人権、多様な価値観を尊重し、不当な差別行為を排除。安全で快適な職場環境を実現するとともに、社員それぞれの多様な働き方を尊重、ワーク・ライフ・バランスの実現)
Q
近年、気候変動のリスクが企業価値に与える影響の問題が指摘されています。当社はグループとして、この気候変動問題に対してどのように考えており、また、どのような取組みを行っているのでしょうか。
A
気候変動は、重要な問題であると認識しています。すなわち、気候変動リスクの適切な管理の実施および温暖化対策の推進は、社会課題の解決につながる面があり、企業価値を維持・向上する上でも重要であると考えております。〇〇グループとしては、海外にグローバル展開する企業の責任として、事業活動を通じて気候変動問題の解決に貢献するとともに、自らの事業活動に伴う環境負荷低減に積極的に取り組んでいます。
環境情報の収集と開示については、環境情報の信頼性確保の観点から、2018年3月期のデータから第三者による保証を受けています。また、〇〇グループは、2019年3月、「気候関連財務情報開示タスクフォース」(TCFD)の提言に対する支持を表明しており、TCFDに沿って気候変動に関する情報開示を行っています。
気候変動問題への具体的な取組みとして、以下の施策を実施してきました。第1に自社グループの所有ビルの電気・空調設備について、省エネ効果の高い機器への更新や運用の工夫によって、電力使用量の削減を図っています。第2に、工場では、省エネ設備の導入や既存設備の定期メンテナンス、設備運転の効率化を進めることでエネルギーロス削減に係る取組みを実施しています。第3に、再生可能電力の利用を通じて、環境負荷低減を促進しています。国内におけるグリーン電力の購入量は、2023年3月末までに累計〇〇〇万kWhに達しました。また、ヨーロッパの拠点では、オフィスで利用する電力を、水力発電などの再生可能エネルギーで賄っています。
当コラムの意見にわたる部分は個人的な見解であり、EY新日本有限責任監査法人の公式見解ではないことをお断り申し上げます。