公認会計士 太田 達也
「税効果会計に適用する税率に関する適用指針」の公表
平成28年3月14日付で企業会計基準委員会(ASBJ)から、「税効果会計に適用する税率に関する適用指針」(以下、「適用指針」)が公表されました。平成28年3月31日以後に終了する連結会計年度および事業年度の年度末に係る連結財務諸表および個別財務諸表から適用されます。
適用指針では、繰延税金資産および繰延税金負債の計算に用いる税率は、決算日において国会で成立している税法に規定されている税率によるものとされており、改正前の「公布日」基準から「成立日」基準への見直しが行われました。決算日以前に改正税法が国会で成立している場合は、法定実効税率の計算は改正後の税率で計算する必要があります。
東京都と大阪府の改正動向
本年3月29日付で地方税法等を改正するための法律が国会で成立しました。適用指針では、超過税率を適用する地方自治体の場合について、当事業年度において地方税法等を改正するための法律が成立している場合に、①改正された地方税法等(以下「改正地方税法等」という)を受けて改正された条例(以下「改正条例」という)が決算日以前に各地方公共団体の議会等で成立している場合と、②改正地方税法等を受けた改正条例が決算日以前に各地方公共団体の議会等で成立していない場合、以上の2つの取扱いが示されました。
大阪府は、本年2月の議会に条例改正案を付議し、本年3月に成立させています。次のとおり改正が行われました。
平成28年度税制改正により、外形標準課税適用法人の所得割の税率が引き下げられ、付加価値割と資本割の税率が引き上げられたことに対応して、超過税率を上記のように改めるものであり、所得割の超過税率は標準税率0.7%に対して超過税率0.88%とされたものです。
これに対して、東京都の場合も、昨年と同様、条例改正を議会に付議せず、東京都知事の専決事項として本年3月31日に次のように決定しました。すなわち、所得割の超過税率を標準税率0.7%に対して超過税率0.88%と、大阪府と同じ超過税率としました(付加価値割と資本割も同じ)。また、法人住民税法人税割の税率見直しなど、平成29年度以降の適用分は本年6月以降の議会で改正する予定です。
東京都の超過税率を前提とした法定実効税率
本年3月31日までに改正税法が国会で成立し、かつ、東京都の条例改正も成立しましたので、3月決算会社の平成28年3月期に適用する法定実効税率は次のようになります。一時差異等の解消時期に応じて、それぞれ次の法定実効税率を用いると考えられます。なお、東京都かつ外形標準課税適用法人の場合を前提としています。
1. 平成28年4月1日以後、かつ平成29年3月31日以前に解消が見込まれる一時差異等に乗じる法定実効税率
東京都の場合の法人住民税法人税割は、制限税率と同じ16.3%であり、それと別に4.4%の地方法人税が課されます。また、事業税(所得割)の超過税率が0.88%に改正されましたが、地方法人特別税は標準税率で計算しますので、0.7%×414.2%となります。
2. 平成29年4月1日以後、かつ平成30年3月31日以前に解消が見込まれる一時差異等に乗じる法定実効税率
法人住民税法人税割は、地方税法等の改正により標準税率が7.0%になります。東京都の場合は今回の条例改正ではこれに対する超過税率を定めていませんが、改正前の超過税率と標準税率の差分3.4%(16.3%-12.9%)を改正後の標準税率7.0%に加算し、10.4%として計算することができます(適用指針8項(1))。これと別に地方法人税10.3%が課されます。
また、地方法人特別税は廃止されますが、法人事業税は3.6%に復元されます(地方税法72条の24の7第1項1号ハ)。これについても、東京都の場合は今回の条例改正では超過税率を定めていませんが、改正前の超過税率と標準税率の差分0.18%(0.88%-0.7%)を改正後の標準税率3.6%に加算し、3.78%として計算することができます(適用指針8項(1))。
3. 平成30年4月1日以後に解消が見込まれる一時差異等に乗じる法定実効税率
分子の法人税率が23.2%となりますが、あとは先の2の計算式と同じです。
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