公認会計士 太田 達也
企業結合会計基準等の改正
平成25年9月13日付で、「企業結合に関する会計基準」及び関連する各会計基準の改正が公表されました。子会社株式の追加取得の会計処理については、企業結合会計基準46項において、非支配株主(本改正前は「少数株主」とされていましたが、用語が改正されています。(以下、非支配株主))との取引については、「連結財務諸表に関する会計基準」(以下連結会計基準)における子会社株式の追加取得及び一部売却等の取扱い(連結会計基準28項~30項)に準じて処理するものとされていますが、その連結会計基準が改正されました。
本改正は、暫定的な会計処理の確定の取扱いを除き、原則として、平成27年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されます(早期適用可)。
子会社株式を追加取得した場合の会計処理
連結会計基準の改正前は、子会社株式を追加取得した場合、追加取得した株式に対応する持分を非支配株主持分から振り替えて親会社持分を増加させるとともに、親会社の追加取得持分と追加投資額とを相殺消去し、追加取得持分と追加投資額との差額は、「のれん」または「負ののれん」として計上するものとされていました。
改正後は、追加取得した株式に対応する持分を非支配株主持分から振り替えて親会社持分を増加させるとともに、親会社の追加取得持分と追加投資額とを相殺消去しますが、追加取得持分と追加投資額との間に生じた差額は、資本剰余金とするものと改められました。
以下、設例により具体的な会計処理を示します。
設例 子会社株式の追加取得に係る会計処理
前提条件
P社は、X1年3月31日にS社株式70%を950で取得し、子会社化しました。S社が保有する土地の帳簿価額は600であり、X1年3月31日における時価は1,000でした。S社における個別財務諸表の修正仕訳を示してください。また、連結決算における資本連結の仕訳を示してください。なお、S社のX1年3月31日現在の資本金は500、利益剰余金は200でした。のれんの償却期間は10年とします。
P社は、X2年3月31日にS社株式10%を150で追加取得しました。その時点でのS社の資本金は500、利益剰余金は350でした(X2年3月期における当期純利益は150とします)。
解答
1. 資本連結の処理
(1) 子会社の資産を支配獲得時に時価評価する
(2) 投資と資本の相殺消去
2. 非支配株主損益の計上
3. のれんの償却
4. 追加取得に係る連結仕訳
子会社株式の一部売却に係る会計処理
子会社株式の一部売却の場合の会計処理も改められました。
改正前は、子会社株式を一部売却した場合(親会社と子会社の支配関係が継続している場合に限られます)には、売却した株式に対応する持分を親会社の持分から減額し非支配株主持分を増額し、売却による親会社の持分の減少額(以下、売却持分)と投資の減少額との間に生じた差額は、子会社株式の売却損益の修正として処理するものとされ、また、売却に伴うのれんの未償却額についても同様に処理するものとされていました。
改正後は、子会社株式を一部売却した場合(親会社と子会社の支配関係が継続している場合に限られます)には、売却した株式に対応する持分を親会社の持分から減額し、非支配株主持分を増額する点は従来と同じですが、売却持分と売却価額との間に生じた差額は、資本剰余金とするものとされました。また、本改正前は、子会社株式の一部売却の場合、のれんの未償却額を減額するものとされていましたが、改正後の取扱いでは減額しないものと改められました。
なお、子会社株式の売却等により被投資会社が子会社及び関連会社に該当しなくなった場合には、連結財務諸表上、残存する当該被投資会社に対する投資は、個別貸借対照表上の帳簿価額をもって評価することになります。
以下、具体的な設例により会計処理を示します。
設例 子会社株式の一部売却に係る会計処理
前提条件
P社は、X1年3月31日にS社株式70%を950で取得し、子会社化しました。S社が保有する土地の帳簿価額は600であり、X1年3月31日における時価は1,000でした。
P社は、X2年3月31日にS社株式のうち7%(簿価95)を120で外部株主に売却し、売却益25を計上しました。X2年3月期のS社の当期純利益は150とします。
S社のX1年3月31日現在の資本金は500、利益剰余金は200、S社の、X2年3月31日現在の資本金は500、利益剰余金は350であったとします。また、のれんは10年で償却するものとします。
解答
1. 資本連結の処理
(1) 子会社の資産を支配獲得時に時価評価する
(2) 投資と資本の相殺消去
2. 非支配株主損益の計上
3. のれんの償却
4. 持分変動差額の処理
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