「リースに関する会計基準(案)」等(借手のすべてのリースをオンバランスするもの)の公表

2023年5月10日
カテゴリー 会計情報トピックス

EY新日本有限責任監査法人
公認会計士 宮﨑 徹

企業会計基準委員会(ASBJ)及び日本公認会計士協会(JICPA)から2023年5月2日に以下の会計基準等の公開草案(以下「本公開草案等」という。)が公表されました。本公開草案等の開発にあたっての基本的な方針や適用時期は以下のとおりであり、会計基準の公表から原則的な適用時期までの期間を2年程度とし、早期適用を認めることが提案されています。なお、本公開草案等の内容については、後日追加で掲載予定です。

<ASBJから2023年5月2日に公表>

  • 企業会計基準公開草案第73号「リースに関する会計基準(案)」
  • 企業会計基準適用指針公開草案第73号「リースに関する会計基準の適用指針(案)」
  • その他、上記公開草案により影響する企業会計基準、企業会計基準適用指針及び実務対応報告の改正に係る公開草案(計12件)
     

<JICPAから2023年5月2日に公表>

  • 会計制度委員会報告第8号「連結財務諸表等におけるキャッシュ・フロー計算書の作成に関する実務指針」等、上記公開草案により影響する実務指針等の改正(9件)及び廃止(1件)

1. 本公開草案等の基本的な方針

ASBJにより、リースに関する国際的な会計基準との整合性を図るために、オペレーティング・リースを含む借手のすべてのリースについて資産及び負債を計上する会計基準の開発が進められており、今般、公開草案が公表されました。その開発にあたっての基本的な方針は以下のとおりです。

国際財務報告基準(IFRS)第16号「リース」(以下「IFRS第16号」という。)と同様に、リースがファイナンス・リースであるかオペレーティング・リースであるかにかかわらず、すべてのリースを金融の提供と捉え使用権資産に係る減価償却費及びリース負債に係る利息相当額を計上する単一の会計処理モデル(※)によることが提案されています。

また、IFRS第16号のすべての定めを取り入れるのではなく、主要な定めの内容のみを取り入れることにより、簡素で利便性が高く、かつ、IFRSを任意適用して連結財務諸表を作成している企業が、本公開草案等を個別財務諸表に適用した場合に、IFRSでの連結財務諸表に当該個別財務諸表を用いても、基本的に修正が不要となる会計基準とすることが提案されています。

その上で、国際的な比較可能性を大きく損なわせない範囲で代替的な取扱いを定める、又は、経過的な措置を定めるなど、実務に配慮した内容が提案されています。

なお、修正箇所が多岐にわたるため、既存の会計基準の改正ではなく、新たな会計基準とすることが提案されています。

本公開草案等の借手における会計処理のイメージ

  現行の会計処理 本公開草案等の会計処理
ファイナンス・リース オンバランス(リース資産、リース債務) オンバランス(使用権資産、リース負債)
オペレーティング・リース オフバランス(通常の賃貸借処理)

 


(※)IFRS第16号の単一の会計処理モデルに対して、米国会計基準であるFASB Accounting Standards CodificationのTopic842「リース」では、使用権モデルによりオペレーティング・リースも含むすべてのリースについて資産及び負債を計上するという点は相違ないものの、オペレーティング・リースの借手が取得する権利及び義務は、残存する資産に対する権利及びエクスポージャーを有さず、オペレーティング・リースを均等なリース料と引き換えにリース期間にわたって原資産に毎期均等にアクセスする経済的便益を享受するものと捉えて、従前と同様にファイナンス・リース(減価償却費と金利費用を別個に認識する。)とオペレーティング・リース(通常、均等な単一のリース費用を認識する。)に区分する2区分の会計処理モデルが採用されています。

2. 適用時期

以下のとおり提案されています。

原則適用 20XX年4月1日[公表から2年程度経過した日を想定している。]以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用
早期適用 20XX年4月1日[公表後最初に到来する年の4月1日を想定している。]以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から早期適用可

仮に会計基準等が2024年3月までに公表された場合には、原則適用は2026年4月1日以後開始する年度の期首からとなり、この場合であっても2024年4月1日以後開始する年度の期首から早期適用することも認められることになると考えられます。

なお、これまでの会計基準では公表から原則適用まで1年程度とすることが多かったものの、本公開草案等ではリースの識別を始めこれまでとは異なる実務を求めることとなるため、1年程度では短い可能性等を考慮し、上記の原則適用の時期が提案されています。一方で、適用時期までの期間を長く設けると国際的な実務と整合的なものとなるまでの期間が長くなることを考慮し、上記の早期適用の時期が提案されています。

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