会計情報トピックス 吉田剛
企業会計基準委員会が平成24年3月16日に公表
企業会計基準委員会は、平成24年3月16日に実務対応報告第29号「改正法人税法及び復興財源確保法に伴い税率が変更された事業年度の翌事業年度以降における四半期財務諸表の税金費用に関する実務上の取扱い」(以下「本実務対応報告」という。)を公表しています。
企業会計基準委員会からは、「経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律」(平成23年法律第114号)による法人税法の改正(以下「改正法人税法」という。)及び「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法」(平成23年法律第117号)(以下「復興財源確保法」といい、改正法人税法と合わせて、「改正法人税法等」という。)が平成23年12月2日に公布されたことに伴う会計処理への影響のうち、改正法人税法等の公布日を含む事業年度に係る四半期決算における税金費用の取扱いについて、実務対応報告第28号「改正法人税法及び復興財源確保法に伴う税率変更等に係る四半期財務諸表における税金費用の実務上の取扱い」(以下「実務対応報告第28号」という。)が平成24年1月20日に公表されています。
実務対応報告第28号では、改正法人税法等の公布日を含む事業年度の翌事業年度以降における税金費用の取扱いについては、企業会計基準委員会において引き続き検討するとされており、本実務対応報告では、改正法人税法等の公布日を含む事業年度の翌事業年度以降に係る四半期決算における税金費用の実務上の取扱いが確認されています。本実務対応報告の公表は、改正法人税法等の公布により、税効果会計の計算に適用される税率が複数存在する状況が一定期間にわたって続くことに鑑みたものであるとされています。
1. 本実務対応報告の概要
① 四半期特有の会計処理―複数の税率により繰延税金資産又は繰延税金負債が計算される場合(本実務対応報告Q2)
四半期特有の会計処理(四半期会計期間を含む事業年度の税効果会計適用後の実効税率を合理的に見積り、税引前四半期純利益に当該見積実効税率を乗じて四半期会計期間の税金費用を計算する方法)によっている場合、見積実効税率の算定において会計制度委員会報告第11号「中間財務諸表等における税効果会計に関する実務指針」(以下「中間税効果実務指針」という。)第9項の定めに従うと、予想年間税金費用の算定に際し法定実効税率を用いることになります。
しかしながら、改正法人税法等の公布日を含む事業年度の翌事業年度以降の四半期会計期間における繰延税金資産又は繰延税金負債の計算に適用される税率は、税率の変更年度と同じく、単一ではなく複数となることも考えられます。また、例えば、復興特別法人税が課せられる事業年度に係る四半期会計期間において発生した一時差異等の金額が、復興特別法人税が課せられない事業年度に係る四半期会計期間に回収又は支払が行われる可能性があり、これらの影響を適切に反映することが必要となります。
- 例1)3月決算の場合(平成24年6月第1四半期決算を想定)
適用となる税率 平成25年3月期~平成27年3月期 38.01%
平成28年3月期以降 35.64% とする。
この場合、平成24年6月第1四半期に発生した一時差異等は、その回収又は支払が行われると見込まれる期間に応じ、38.01%又は35.64%を用いて繰延税金資産又は繰延税金負債を算定すべきであるが、見積実効税率の算定において、中間税効果実務指針第9項の定めに従うと、当期の法定実効税率(38.01%)を前提に税金費用が計算される。 - 例2)12月決算の場合(平成24年3月第1四半期決算を想定)
適用となる税率 平成24年12月期 40.69%
平成25年12月期~平成27年12月期 38.01%
平成28年12月期以降 35.64% とする。
この場合、平成24年3月第1四半期に発生した一時差異等は、その回収又は支払が行われると見込まれる期間に応じ、40.69%、38.01%又は35.64%を用いて繰延税金資産又は繰延税金負債を算定すべきであるが、見積実効税率の算定において、中間税効果実務指針第9項の定めに従うと、当期の法定実効税率(40.69%)を前提に税金費用が計算される。
このため、改正法人税法等の公布日を含む事業年度の翌事業年度以降の四半期会計期間において、四半期特有の会計処理により税金費用を計算し、かつ、複数の税率で繰延税金資産又は繰延税金負債が計算される場合には、税率変更年度の同様の方法(中間税効果実務指針第10項(*)、第12項(法定実効税率を使用する場合))により、税金費用の計算を行うこととされました(本実務対応報告Q2(1))。
(*)中間税効果実務指針第10項に準じて算定される見積実効税率
なお、複数税率の影響が重要でないと見込まれる場合には、中間税効果実務指針第9項(又は第11項)の取扱いをそのまま適用する取扱いが確認されています(本実務対応報告Q2(2))。
② その他(本実務対応報告Q1)
①のほか、四半期決算の税金費用の計算を原則法により行っている場合(年度決算と同様の方法により計算している場合)、現行の会計基準等などの定めのうち、以下の取扱いが確認されています。
- 四半期財務諸表における税金費用について、原則的な方法によった場合には、支払又は回収が行われると見込まれる期に対応した改正後の税率を用いて繰延税金資産及び繰延税金負債が計算されること
- 復興特別法人税額が上乗せされる期間に支払又は回収が行われると見込まれる繰延税金資産又は繰延税金負債は、復興特別法人税額を含む税率を用いること
- スケジューリングが不能な一時差異に関しては、一律に復興特別法人税額を含まない税率で繰延税金資産及び繰延税金負債が計算されること
また、設例として、以下のものが示されています。
設例1
税率が変更された事業年度の翌事業年度以降における四半期財務諸表の税金費用の計算
設例2
複数税率の影響が重要ではない場合における四半期財務諸表の税金費用の計算
2. 公開草案から変更された主な点
平成24年2月に公表された公開草案から、見積実効税率の算定において、一時差異等の見積りは、重要な項目に限定する方法によることができる旨、及び税務上の繰越欠損金についても、重要な影響が見込まれる場合には見積実効税率の算定上、考慮する旨が追記されました(本実務対応報告Q2(1))。
3. 適用時期等
改正法人税法等の公布日(平成23年12月2日)を含む事業年度の翌事業年度に係る第1四半期会計期間から適用となります。
なお、本実務対応報告の適用については、会計方針の変更に該当しないこととされています。
なお、本稿は本実務対応報告の概要を記述したものであり、詳細については本文をご参照ください。