会計情報トピックス 森さやか
企業会計基準委員会が平成23年3月25日に公表
企業会計基準委員会は、平成23年3月25日、改正企業会計基準第12号「四半期財務諸表に関する会計基準」等を公表しました。
本改正企業会計基準等では、平成22年6月に閣議決定された「新成長戦略」において、四半期報告の簡素化が盛り込まれたことを受けて、四半期報告における簡素化の取扱いを示したものです。
1. 今回改正された会計基準等
- 改正企業会計基準第12号「四半期財務諸表に関する会計基準」(以下、「改正会計基準」)
- 改正企業会計基準適用指針第14号「四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針」(以下、「改正適用指針」)
- 改正企業会計基準第20号「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準」
- 改正企業会計基準適用指針第4号「1株当たり当期純利益に関する会計基準の適用指針」
- 改正企業会計基準適用指針第15号「一定の特別目的会社に係る開示に関する適用指針」
- 改正企業会計基準適用指針第16号「リース取引に関する会計基準の適用指針」
- 改正企業会計基準適用指針第19号「金融商品の時価等の開示に関する適用指針」
- 改正企業会計基準適用指針第21号「資産除去債務に関する会計基準の適用指針」
2. 改正の主な内容
(1)第1、第3四半期における四半期(連結)キャッシュ・フロー計算書の省略(改正会計基準第5-2項、第6-2項、第19項(20-2)、第25項(19-2)、第36-2項)
第1四半期及び第3四半期においては四半期(連結)キャッシュ・フロー計算書の作成を省略することができるとされています。省略する場合は、第1四半期より行うものとされています。
この場合には、期首からの累計期間に係る有形固定資産及びのれんを除く無形固定資産の減価償却費及びのれんの償却額(負ののれんの償却額を含む)を注記するとされています。これは、キャッシュ・フローを推測するための補完的な情報を求める四半期財務諸表利用者の要請に配慮したものです。
(2)四半期(連結)損益計算書の開示対象期間(改正会計基準第7項(2)、第7項(3)、第7-2項、第7-3項、第7-4項、第37-2項、第37-3項、改正適用指針第37-2項)
四半期報告書に含まれる四半期(連結)損益計算書及び四半期(連結)包括利益計算書(又は四半期(連結)損益及び包括利益計算書)の開示対象期間は、期首からの累計期間及び前年度における対応する期間とするとされています。
なお、これまで開示が義務付けられていた3か月情報は、任意で期首からの累計期間と併せて開示することができるものとされています。開示する場合は、第1四半期より開示を行うものとされています。
また、上記にかかわらず、前年度における対応する四半期において開示を行わなかった場合で、当年度の四半期より開示するときは、前年度における対応する期間に係る開示は要しないこととされています。
(3)注記事項の簡素化(改正会計基準第55-2項等)
以下の注記事項について、従来より簡素化されることになりました(四半期損益計算書の開示対象期間の見直しに伴うものを除く)。
① 削除される注記事項 |
表示方法の変更 |
簡便的な会計処理に係る記載 |
1株当たり純資産額 |
発行済株式総数等 |
ストック・オプション関係 |
担保資産の注記 |
【年度末と比較して著しい変動があった場合の注記(以下参照)】 |
賃貸等不動産の時価等 |
資産除去債務 |
リース注記 |
開示対象特別目的会社に関する注記 |
② 記載内容を見直した事項 |
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1 | 重要な企業結合に関する事項の項目から、当該企業結合が当年度の期首に完了したと仮定したときの影響の概算額等の記載を求めない。 | |
2 | 四半期会計期間の情報を四半期(連結)損益計算書及び四半期(連結)包括利益計算書(又は四半期(連結)損益及び(連結)包括利益計算書)で任意開示する場合における四半期会計期間に係る注記も任意開示する(ただし、第1四半期より行う)。 (注:包括利益を表示する計算書については、当面連結のみの適用) |
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3 | 企業集団又は企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況を適切に判断するために重要なその他の事項の例として示す事項について、下記の通り見直した。 | |
例示から削除 | 日本公認会計士協会監査委員会報告第77号「追加情報の注記について」で記載されている事項 | |
例示内容の見直し | 貸倒引当金や減価償却累計額などで資産の控除項目として表示されていない科目の記載については、貸倒引当金のみ記載する。 | |
子会社の決算日の変更の記載について、当該変更により四半期損益に重要な影響を及ぼす場合に記載する。 | ||
有価証券、デリバティブ取引、金融商品の時価情報の記載については、金融機関等を除く企業集団(企業)においては、第1四半期会計期間及び第3四半期会計期間の開示は省略することができるものとする。 |
(4)適用時期(会計基準案第28-10項)
平成23年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の第1四半期会計期間から適用とされています。
3. 公開草案から修正された主な点
第1・第3四半期(連結)会計期間のキャッシュ・フロー計算書の省略をする場合、(連結)損益計算書もしくは(連結)損益及び包括利益計算書における四半期(連結)会計期間の情報、及び、それに付随した四半期(連結)会計期間に係る注記の任意開示を行う場合について、年度内の首尾一貫性を確保する観点から、第1四半期より実施することが明確にされています。
本稿は改正企業会計基準等の概要を記述したものであり、詳細については本文をご参照ください。