会計情報トピックス 吉田剛
企業会計基準委員会が平成22年6月30日に公表
企業会計基準委員会(ASBJ)は、平成22年6月30日に、以下の改正実務対応報告を公表しています。
①実務対応報告第5号「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い(その1)」(以下、改正その1)
②実務対応報告第7号「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い(その2)」(以下、改正その2)
これらの実務対応報告の改正は、平成22年度税制改正(「所得税法等の一部を改正する法律」(平成22年法律第6号・平成22年3月31日公布)等)に対応したものであり、グループ法人税制の導入に伴う諸制度の整備(連結納税制度を適用する場合に、一定の要件を満たした連結子法人(特定連結子法人)における個別欠損金のうち一定の要件を満たす特定繰越欠損金が、連結納税制度適用後も引き続き損金算入が認められるようになったことや、連結納税制度を適用していない場合でも、完全支配関係を有する内国法人間の譲渡損益の繰延が求められるようになったことなど)に対応して、所要の改正が行われたものです。
また、実務対応報告第4号「連結納税制度を適用する場合の中間財務諸表等における税効果会計に関する当面の取扱い」については、連結納税制度の導入初年度における経過措置について定めたものであったため、引き続き必要と考えられる定め(旧・実務対応報告第4号Q2)のみ四半期財務諸表における取扱いに置き直した上で実務対応報告第5号に移動し(Q12-2)、廃止されています。
なお、本改正に係る公開草案に対しては、平成22年6月8日(火)までコメントが募集されていました。
1. 改正内容の概要
(1)特定繰越欠損金制度の創設に伴う改正
連結納税参加前の欠損金を持ち込むことができる特定繰越欠損金制度の創設後も、繰延税金資産の回収可能性の判定に係る基本的な考え方に変更はなく、法令の規定にのっとって見積もった欠損金の回収見込みに応じて、その回収可能性を判断します。
その上で、平成22年度税制改正に伴う以下の事項が改正されています。
① 特定繰越欠損金が含まれる場合の連結上の繰延税金資産の回収可能性の判定(改正その1Q1・Q4)
連結納税主体を一体として回収可能性を判断し、その際に、連結所得見積額と各社の個別所得見積額の双方を勘案することが示されています。
② 特定繰越欠損金が含まれる場合の個別上の繰延税金資産の回収可能性の判定(改正その2Q1~Q3)
連結所得見積額と各社の個別所得見積額を考慮することが示されています。
なお、連結欠損金に係る回収可能額は個別・連結で常に一致することになるため、連結納税参加各社と連結納税主体の回収可能見込額が相違するケースが、将来減算一時差異に係る繰延税金資産に限られることが明確化されました。
(2)完全支配関係を有する内国法人間の譲渡損益繰延に関する改正(改正その1Q5)
今般の税制改正において、連結納税制度を適用していない場合であっても、平成22年10月1日以後、完全支配関係のある内国法人間の資産(一定の要件を満たすものに限ります)の譲渡損益が繰り延べられるようになったことに対応し、所要の改正が行われています。
(3)その他の改正点
以下の点に対応する所要の改正が行われています。
- 完全支配関係が生じた日後の最初の月次決算日の翌日を連結納税加入の効力発生日とすることが認められるようになったことに伴う改正
- 連結納税の承認申請書の提出期限の短縮および新設親会社の承認期限の短縮に伴う改正
(4)公開草案からの主な変更点
公開草案より変更された主な点は以下のとおりです。
- 連結納税制度を適用している各社の個別財務諸表における表示に関して、連結納税親子会社間で連結法人税の個別帰属額を清算しない場合に係る取扱い(税制改正により寄附金として課税されないこととなりましたが、表示上は従来どおり「未収入金」または「未払金」として表示する旨)が明確化されています。
- 公開草案における設例(改正その2設例2-2)に加えて、連結所得が上限となる例である設例2-3が追加されています。
2. 適用時期
平成22年6月30日以後終了する事業年度末および四半期会計期間末から適用することを原則とし、同日より前に終了する事業年度末および四半期会計期間末からの適用が可能とされています。
また、本改正の適用は、会計方針の変更として取り扱わないことが示されています。
本稿は改正の概要を記述したものであり、詳細については以下の財務会計基準機構/企業会計基準委員会のウェブサイトをご参照ください。