会計監理レポート 目黒幸二
企業会計基準委員会が平成20年10月28日に公表
平成20年10月28日に実務対応報告第25号「金融資産の時価の算定に関する実務上の取扱い」(以下、本報告)が、企業会計基準委員会(ASBJ)から公表されました。本報告は、最近の金融市場における混乱を背景にした国際的な会計基準設定主体による公表物との関係で、時価の算定に関する質問が寄せられていることへの対応として、既存の金融商品会計基準および金融商品実務指針等を確認したものです。
なお、本稿において意見にわたる部分については、執筆者の私見であり、当法人の公式見解ではありません。
1. 適用時期
本報告は、現行の実務上の取り扱いを確認するものであるため、本報告公表前に終了した事業年度(当該事業年度を構成する四半期会計期間または中間会計期間を含む)であっても、企業がいまだ公表していない財務諸表においては適用されます。
また、会計方針の変更として取り扱わないこととされています。
2. 会計処理等の概要
(1)時価とは、どのような概念か。
「時価」に関する金融商品会計基準第6項の定義、「取引価額」の概念に関する金融商品実務指針第47項の定義および実務指針第256項の結論の背景を引用して、現状の取り扱いを確認しています。 従って、不利な条件で引き受けざるを得ない取引または他から強制された取引による価格は時価ではないことに留意する必要があるとしています。
(2)市場価格がある場合には、市場価格に基づく価額を時価としなければならないか。
金融資産の取引が活発に行われている市場における市場価格は、公正な評価額を示していると考えられることから、原則として、時価として市場価格に基づく価額を付すこと(実務指針第48項参照)になります。
しかし、実際の売買事例が極めて少ない金融資産(実務指針第53項②)や売手と買手の希望する価格差が著しく大きい金融資産は、市場価格がない(または市場価格を時価と見なせない)と考えられるため、経営陣の合理的な見積もりに基づく合理的に算定された価額(実務指針第54項)によることになります。
(3)市場価額がない、または市場価格を時価と見なせないため、経営者の合理的な見積もりに基づいて時価を算定する場合に留意する事項は何か。
経営者の合理的な見積もりに基づく合理的に算定された価額の算定方法に関しては、実務指針第54項に記載があるため、それを確認しています。
なお、自社における合理的な見積もりが困難な場合には、ブローカー(客観的に信頼性がある独立した第三者)から上記算定方法に基づき算定された価額を入手して、合理的に算定された価額とすることができる(実務指針54項等)ことに留意するとしています。
3. 本報告の性格と財務諸表の注記
本報告は、現行の会計基準等を踏まえた実務上の取り扱いを確認したものであり、現行の枠内での解釈等を変更したり拡大したりするものではないとされています。
本報告では、財務諸表利用者の理解に資すると考えられる場合には、その概要について注記するものとされていますが、現行の追加情報の枠内での注記であり、新たな注記を求めるものではないと考えられます。
本稿は「実務対応報告第25号『金融資産の時価の算定に関する実務上の取扱い』の公表」の概要および主な論点を記述したものであり、詳細については以下の財務会計基準機構/企業会計基準委員会のウェブサイトをご参照ください。