EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
EYではサステナビリティ開示・保証に関連したグローバル動向の最新情報を毎月お届けしています。
IFRS S1/S2基準
国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)はIFRS S1号及びIFRS S2号を6月に最終公表予定です。5月11日から13日まで新潟市で開催されたG7財務大臣・中央銀行総裁会議は、サステナビリティ情報開示に関するISSBの取り組みを支持し、情報開示の一貫性、比較可能性、信頼性の向上をコミットすることを強調しました。
各種公開協議
ISSBは2024年から2026年の2 年間の作業計画を決定するために、アジェンダ の優先度に関する公開協議を開始しました。欧州委員会は欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)の第一弾に関する公開協議を今月にも開始する予定です。企業情報開示の将来に向け、企業、投資家、その他の利害関係者がこれら公開協議へ参加し意見を発信することが推奨されます。
SEC 気候関連開示規則
米国証券取引委員会(SEC)は気候関連開示規則の最終版及び人的資本管理規則の草案を4月に公表予定でしたが未だ公表されておらず、公表時期のアップデートもなされていません。
サステナビリティ情報開示・保証に関するグローバルな最新動向の詳細については以下をご覧ください。
ISSBは2024年から2026年の2年間の作業計画を決定するために、アジェンダ の優先度に関する公開協議を開始しました。
プレスリリース
Consultation now open: The ISSB seeks feedback on its priorities for the next two years
公開協議では幅広い利害関係者から、(1)ISSB の活動の戦略的方向性及びバランス、(2)ISSB の作業計画に追加する可能性のある新たなリサーチ及び基準設定のプロジェクトの優先度の決定についての評価規準案、(3)以下の ISSB の作業計画に追加する可能性がある新たなリサーチ及び基準設定のプロジェクト案についてのコメントを求めています。
(a) 生物多様性、生態系及び生態系サービス
(b) 人的資本
(c) 人権
(d) 報告における統合(integration in reporting)
コメント期限は2023年9月1日で、ISSBは受領したコメントを検討し、12月までに今後2年間の作業計画を決定する予定です。
5月のISSB会議でIFRS S2号の発効に伴うSASBスタンダードの改訂が承認される見通しです。この改訂には、(1)気候変動に関する SASBスタンダードをIFRS S2号の産業別ガイダンスと整合させるための修正に加え、(2) ファイナンスに係る排出に関する開示トピックと指標の追加が含まれます(修正後のSASBスタンダードがIFRS S2号の当該排出に関するガイダンスを直接参照することになります)。
また、ISSBは公開草案「SASBスタンダードの国際的な適用可能性を向上させるための方法論及びSASBスタンダード・タクソノミのアップデート」を公表し、コメントの募集を開始しました。コメント期限は2023年8月9日で、ISSBはコンサルテーションの結果に基づいて2024年1月のIFRS S1号の発効までに、気候変動以外のSASBスタンダードの指標を修正する予定です。
国際監査・保証基準審議会(IAASB)は、サステナビリティ保証基準に関するタイムラインの前倒しを発表しました。2024年中に基準の最終化ができるよう、国際サステナビリティ保証基準(ISSA)5000「サステナビリティ保証業務 に関する一般的要求事項」の公開草案に関する意見募集を2023年7月下旬頃に 開始する予定です。当初は10月の予定でした。
米国証券取引委員会(SEC)は気候関連開示規則の最終版及び人的資本管理規則の草案を4月に公表予定でしたが未だ公表されておらず、かつ公表時期のアップデートもなされていません。先月開催されたウェビナーで元SEC委員のロバート・ジャクソン氏は今秋にも公表される可能性があるとの見方を示しましたが、一方で早ければ6月に公表されるとの見方もあります。
SECのゲンスラー委員長は先月の下院金融サービス委員会で、SECには公正で透明な市場を確保するために気候関連開示を規制する法的権限があるとの見解を示しました。また、SECの気候関連開示規則がEUの基準に実質的に準拠していると評価され、他の法域における比較可能な規制を遵守している企業に対する企業サステナビリティ報告指令(CSRD)の免除の対象になることを望んでいる、と発言しました。
しかしウォール・ストリート・ジャーナルによれば、SECの気候関連開示規則にスコープ3のGHG排出量の開示が含まれない場合、EUは米国の気候関連開示規則を比較可能なものとして取り扱う可能性が低いであろうと報道しています。また、SECのヘスター・ピアース委員は規則策定に反対しており、開示基準の国際的な収斂を求める動きに懸念を示しています。
米国の経営者を対象としたWorkivaとPwCの調査(Change in the Climate)によると、70%がSECの気候関連開示規則案が最終法制化されるかどうか関わらず、「同案に基づくコンプライアンスを進める」と回答しています。また、同回答者の96%が最終規則で保証が義務付けられるかどうかに関わらず、「サステナビリティ開示の第三者保証を受ける」と回答しています。
カナダサステナビリティ基準審議会(CSSB)は初代委員長と初期メンバーを任命したと発表しました。CSSBはカナダにおけるISSB基準の普及を支援することでISSBと提携することになります。
欧州委員会のDG FISMA(金融安定・金融サービス・資本市場同盟総局)は、欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)の第一弾に関する公開協議を5月にも開始する予定です。当初は4月中旬開始の予定でしたが、この遅れにより2023年6月13日に計画されていたESRSの第一弾の採択が若干遅れる可能性があります。
欧州委員会は欧州財務報告諮問グループ(EFRAG)に対し、ESRSのセクター別基準の準備を一年延期する代わりに、ESRSの第一弾(セクター横断的基準)を適用する企業に対する追加的なガイダンスを策定することに焦点を当てるよう要請しました。
ヨーロッパ会計士連盟(Accountancy Europe)は欧州委員会への書簡の中で、EFRAGの資金不足に対する懸念を表明しました。EFRAGは著しく資金不足であり、企業サステナビリティ報告指令(CSRD)が適切な人材とデュープロセスの欠如に陥る恐れがあると指摘しています。
香港証券取引所は気候関連開示の強化に向けたコンサルテーションペーパーを公表しました。上場企業に対してISSB基準に沿った気候関連開示の義務付けを提案しています。現在の「コンプライ・オア・エクスプレイン」(原則を実施するか、実施しない場合には、その理由を説明するか)から変更されることになり、コメント期限は2023年7月14日です。
ニュージーランドの外部報告委員会(XRB)は、2022年12月の気候関連開示の最終基準公表に続き、2023年5月に気候関連開示基準の追加的なガイダンスを公表しました。
現在予定されている、今後注目すべき主な日程は以下です。
トレッドウェイ委員会組織委員会(COSO)は新しい補足ガイダンスであるサステナビリティ報告に係る有効な内部統制の実現(ICSR)を公表しました。これは企業がCOSOの内部統制統合フレームワーク(ICIF)を用いてサステナビリティ報告に係る内部統制を構築するための補足ガイダンスです。
EYは気候関連開示基準の比較(SEC, EFRAG, ISSB)の解説ビデオを公開し、複数の国と地域で事業を展開する企業が要求事項の理解に役立てられるように、各基準間の主な相違点を説明しています。
※所属・役職は記事公開当時のものです。
2021年10月22日に欧州監督当局がサステナブルファイナンス開示規則のドラフト版細則を公表
2021年10月22日、欧州監督当局より、欧州の資産運用会社等に対する開示を義務付けた「サステナブルファイナンス開示規則(SFDR)」における詳細な内容を定めた「ドラフト版細則(Draft Regulatory Technical Standards; Draft RTS)」が公表されました。
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