サステナビリティ情報開示のグローバル動向 2023年6月号

EYではサステナビリティ開示・保証に関連したグローバル動向の最新情報を毎月お届けしています。
 

IFRS S1/S2基準

今月、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)のIFRS S1号及びIFRS S2号が公表される予定で、グローバルなサステナビリティ開示基準への移行に向けた重要な月になると予想されます。また、先月開催されたG7広島サミットでは主要7カ国の首脳が、気候を含むサステナビリティ情報の一貫性、比較可能性、及び信頼性のある情報開示へのコミットメントを強調し、ISSBの取り組みを支持しました。
 

SEC 気候関連開示規則

米国証券取引委員会(SEC)は引き続き、気候関連開示規則の最終化、及び人的資本管理規則の公開草案の公表に向けて取り組んでいます。これらの公表時期については未だ発表されていません。一方、カリフォルニア州議会の上院は、同州で事業を展開している一定の企業に気候関連情報の開示を義務付ける法案を可決しました。同法案は今後カリフォルニア州議会の下院で審議されることになります。
 

ESRS 第一弾に関する公開協議

欧州委員会は欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)公開草案の第一弾について、更新版を公表し、4週間の公開協議を開始しました。この更新は企業の実務上の負担を軽減することを目的としており、一部の例外を除き開示要求事項の多くは重要性(マテリアリティ)評価の対象となること、生物多様性についての移行プラン等 特定の情報開示は任意とすること等が含まれています。

サステナビリティ情報開示・保証に関するグローバルな最新動向の詳細については以下をご覧ください。




Key developments

【Global】

IFRS S1/S2基準

ISSBは今月中にIFRS S1号 サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項(S1)及びIFRS S2 号 気候関連開示(S2)を公表する予定であり、国際的に統一されたサステナビリティ開示基準への大きな一歩を踏み出します。
 

ISSB公開協議

ISSBは現在以下の2つの公開協議を行っています。

  • 2024年から2026年の作業計画を決定するためのアジェンダ の優先度に関する公開協議

  • SASBスタンダードの国際的な適用可能性を向上させるための方法論及びSASBスタンダード・タクソノミのアップデート」公開草案に対する意見募集

                

中小企業向け国際財務報告基準(IFRS for SMEs)

IFRS財団は、気候関連事項が中小企業向け国際財務報告基準に従って作成された財務諸表に及ぼす影響をまとめた資料を公表しました。
 

生物多様性関連

主要な基準設定主体は引き続き、生物多様性関連の開示に注目しています。


【Americas】

米国証券取引委員会(SEC)は引き続き、気候関連開示規則の最終化、及び人的資本管理規則の公開草案の公表に向けて取り組んでいます。これらの規則の公表時期については依然として発表されていません。

カリフォルニア州議会の上院は、同州で事業を展開し、売上が年間10億ドル以上の企業に気候関連情報の開示を義務付ける法案を可決しました。同法案は今後カリフォルニア州議会の下院で審議されることになります。法案が成立した場合、約5,400社の企業にスコープ3の温室効果ガス排出量の開示が義務付けられることになります。


【EMEIA(欧州・中東・インド・アフリカ)】

ESRS 第一弾に関する公開協議

欧州委員会のDG FISMA(金融安定・金融サービス・資本市場同盟総局)は、欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)公開草案の第一弾について、更新版を公表し、4週間の公開協議を開始しました。この公開協議は利害関係者が同草案に対する意見を提供する最後の機会です。

この更新はステークホルダーからのフィードバックを反映したものであり、企業の実務上の負担を軽減することを目的としています。開示要求事項は40%削減され、個別の開示データポイントは50%削減されました。主な更新内容は以下の通りです。

  1.  一部の例外を除き、開示要求事項の多くは重要性(マテリアリティ)評価の対象となります。

  2. より多くの要求事項が段階的に導入される予定です。例えば、従業員数が750人未満の企業は、適用初年度においてscope3のGHG排出量の開示が免除されます。

  3. 生物多様性についての移行プラン等、 特定の情報開示は任意となります。

  4. 重要性(マテリアリティ)評価プロセスの手法等、特定の情報についてより柔軟な開示が認められます。

なお、コメント期限は7月7日で、その後欧州委員会によって採択され、企業サステナビリティ報告指令(CSRD)に基づき2024年1月に発効する予定です。
 

その他

EU理事会及び欧州議会は、5月23日、企業 の財務・サステナビリティ情報のプラットフォーム「European Single Access Point(ESAP)」に関して暫定合意に達しました。デジタル形式で開示されたサステナビリティ情報をESAPに集約することで、投資家が企業情報へ容易にアクセスできるようになります。

英国の上場企業は、英国金融行為規制機構(FCA)のレポーティングルールに従って、初めての気候関連情報の開示を2023年6月30日までに行います。また、英国ビジネス・通商省(DBT)及び英国財務報告評議会(FRC)は、英国企業に対する非財務報告の要件の見直しに関する意見募集を行っています。募集期間は8月16日までです。


【Asia-Pacific】

マレーシア証券委員会(SC)は、今後予定されているISSB基準の導入に向けて諮問委員会を設置し、サステナビリティ情報開示の義務化に向けて大きな一歩を踏み出しました。

韓国金融委員会(FSC)は、韓国企業のEUや米国で開発中の国際的な開示基準に沿ったESG開示を支援するために、国際的な基準と整合的な韓国独自の基準を作成する予定です。



今後の日程

現在予定されている、今後注目すべき主な日程は以下です。

  • 時期未公表:米国SECによる気候関連開示規則の最終版及び人的資本関連開示規則の草案の公表

  • 2023年6月:ISSBがサステナビリティ開示基準(S1, S2)を最終化

  • 2023年6月:EUにおいてEFRAGがESRS公開草案の第一弾に関する公開協議を開始

  • 2023年7月:欧州委員会は7月末までにESRS公開草案の第一弾を採択予定

  • 2023年7/8月:IAASBがサステナビリティ保証基準に関する公開協議を開始

  • 2023年9月:ISSBの2024年から2026年までの作業計画に関する公開協議のコメント期間終了

  • 2023年Q3:IOSCOがISSB基準(S1, S2)の承認に関する決定を発表


その他の重要トピック

監査委員会のためのガイダンス

国際会計士連盟(IFAC)は、サステナビリティ関連開示を監督する監査委員会のための新しいハイレベル・ガイダンスを発表しました。
Key Questions for Audit Committees Overseeing Sustainability-Related Disclosure
 

ESG情報エコシステム

ESG指標に対するステークホルダーの信頼を高めるために、ESG情報エコシステムを進化させる必要があります。
For stakeholders to put faith in ESG metrics, the ESG ‘information ecosystem’ needs to evolve 

ESGにおいて信頼関係を築くための5つの優先課題


〈お問い合わせ先〉
EY新日本有限責任監査法人
サステナビリティ開示推進室

牛島 慶一
EY Climate Change and Sustainability Services, Japan Regional Leader, APAC ESG & Sustainability Strategy Solution Leader
馬野 隆一郎
EY新日本有限責任監査法人 サステナビリティ開示推進室 室長 パートナー
Kyle Lawless
EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 ストラテジー・アンド・トランザクション EYパルテノン ディレクター

※所属・役職は記事公開当時のものです。



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