サプライチェーンリスク診断とは
リスク診断は6つのカテゴリーから構成されます。
その範囲はサプライヤーから、製造・物流、顧客にわたるまでを包括したサプライチェーン全体です。診断は各カテゴリーに関連する拠点・部門へのインタビューによって行われ、現状のリスク対応の習熟度を確認することで、最終的にカテゴリーごとのリスクレベルを可視化します。ERP(企業資源計画)システムなどデータが一元管理できている場合は、データによる定量診断も可能です。
6つのカテゴリー
1. 情報と分析
・重要なデータの可視化
・現状のサプライチェーンにおける影響の特定
2. 動的なネットワークの最適化
・グローバルにまたがる貿易、関税、政策
・供給から流通までの業務プロセスの担保
3. 総合的な計画の見直し
・事業・製品体系ごとの需要見込みの見直し・仮説シナリオの策定
・生産・供給計画の見直し・仮説シナリオの策定
4. サプライヤー・顧客との連携
・代替サプライヤーの特定と評価
・サプライヤー・顧客との契約リスクの把握
5. 財務リスクの影響緩和
・財務影響評価
・リスクと保証の影響分析
6. 危機管理ガバナンス
・ 労働の制約と影響の把握
・ 危機管理とコミュニケーション
リスク診断の質問例
実際にリスク診断のインタビューでどういった内容を確認するのか、それによってどのような対応が想定されるのかを、「動的なネットワークの最適化」を具体例に見てみましょう。
動的ネットワークにおけるクイック診断
- 今後予定されている生産計画を維持するため、必要となる重要部品を特定し、関連する1次~3次請けサプライヤーの場所を把握しているか
- 仮説シナリオに基づき、サプライチェーン全体で代替利用が必要な港湾、輸送方法、貿易ルートをそれぞれ検討しているか
- 生産活動においてボトルネックとなり得る制約条件やキャパシティが特定されているか
- 移動制限に伴う輸送および生産における労働力不足の影響を評価しているか
- ビジネス状況とプロジェクト進捗のアップデートを行うため、主要な拠点間のコミュニケーションを実施しているか
- 販売チャネルごとの需要の変化を確認・分析しているか(例:eコマースにおける売り上げの増加など)
実際のインタビューでは診断項目をより現場業務に即した形での内容に落とし込み、情報の管理、ヒト・モノの動き、財務的な事実に基づいて診断することが重要です。
リスク診断後の対応ステップ
対応すべきカテゴリーはリスクの影響度の大きい順に優先順位を付け、リスクの全体像を把握し、優先度の高いカテゴリーの課題を具体化します。
- サプライチェーンリスクの深堀り
リスクの影響度の大きいカテゴリーについて、リスクファクターを分析し、課題を特定します。 - 特定された課題への対応方針策定
特定した課題に優先順位を付け、対応方針・内容を検討します。プランニング、サプライチェーンネットワーク、コストの最適化といった観点で進めていくことが有効です。 - 課題対応タスクフォースの設立
施策実行にあたっては、進捗状況の管理、サプライヤーや複数の部門やエンティティといったステークホルダーとの折衝や意思決定が必要となるため、専任の課題対応のタスクフォースを設立することが肝要です。 - 活動計画の策定から実行まで
ステップ2.で検討した方針・内容に対する活動計画を策定し、実行に移します。実行にあたっては、ステップ3.の課題対応タスクフォースが主導し、実現に向けてコミットします。
サプライチェーンの弾力性構築に向けたそれぞれの施策の具体的な検討対象・構築手法については以下の記事を参照ください。
サマリー
リスク診断により、危機発生時の収益構造を分析し、質的・量的の両側面から経営に影響を与えるリスクファクターを洗い出し、対応すべき課題を特定することが重要です。EYはリスク診断から課題の分析、対応方針の策定・実行を支援します。